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全体
良い
映像
良い
キャラクター
良い
ストーリー
良い
音楽
良い

全体的にシナリオの出来はよく、前~中盤の群像劇パートから後半の盛り上がりという序破急の流れはしっかりしているし、性急さも退屈さも感じることはなくいいペースで、安定して進んでいく。
メインキャラの感情は魅力ある描き方をされていて、「不快」「ウザい」キャラはいないし、キャラクター性も一貫していて好感が持てる。人間関係もわかりやすく、不器用な少年少女がぶつかり合い、すれ違いながら団結していくドラマ部分はきちんと「青春」している。
そして中盤以降、クラス全体でミュージカルに取り組むことになってからはミュージカルを軸に4人の実行委員とクラス団結を描きつつ、順と拓実の関係を描いていくのだが、このミュージカルシーンに合わせたクライマックスの構成には唸らされた。

プロローグで幼少期の順が犯した過ちからはじまり、物語の根幹には「言葉」というテーマがある。「言葉に出さなければ感情は伝わらない」という普遍的なテーマなのだが、これもきちんとブレずに一貫している。
中盤、罵り合う野球部の面々に叫んだ順の「言葉で傷ついたものは元には戻らない」という台詞や中学時代の順と菜月の恋愛関係解消の理由など、物語の重要な部分で「言葉」が大事な意味を持つ。

そしてクライマックスの展開だが、ここにひとひねりがある。幼いころのトラウマが原因で「喋ること」を封じられたヒロイン、成瀬順と、物静かで何事にも関心を見せない坂上拓実が、高校の地域交流会をきっかけに接近し、紆余曲折を経てトラウマを克服し結ばれる…というのが公開前の情報を見聞きした多くの人の想像する大筋だろうが、そこは歴戦のスタッフ、そんな陳腐な物語で終わるはずもなかった。
このクライマックスが本作を単なる「甘酸っぱい青春ドラマ」に終わらせない大きな要素となっている。
個人的には、このクライマックスで本作の評価が上がった。

美術の出来もよく、田舎町の空気感であるとか、高校の描写はいかにもな「それっぽさ」があり作品の雰囲気作りに貢献している。

しいて突っ込みどころがあるなら、青春ドラマゆえ致し方ないが若干「物語がキレイすぎる」のは人によっては気になるか。
「理不尽な故障で甲子園の夢を絶たれてやさぐれている」という理由があるとはいえ若干改心が早すぎる感のある大樹もそうだし、順の必死な姿勢を通じてのクラスの団結もややご都合主義な感はある。
しかし、シナリオの全体の出来の良さに比べれば大した問題ではないというのが個人的な感想。

総合すると、美術、音楽、シナリオといい所を押さえた名作。
アニヲタでない人も楽しめるはず。



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