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とても良い

定命と永遠の命。静かに語られてきたテーマが一気に溢れ出した回でした。それぞれの狭間で生きてきたエリアスにとってはここが正念場。己の問題にすら気付けていなかった彼にとっての大きな成長の時です。
我を失うほど取り乱しているエリアスなのにチセのことを思い懸命に自制する姿がかわいかったです。骨頭なのでどうしてもかっこいいよりかわいいという印象になってしまいますが、全てから距離を置いていた以前の彼からすると大変な変化です。
変わらぬ自分達の世界でそのルールに則って楽しく暮らしたい。そんな妖精達に弾かれたエリアスにとってもやはり時間は永劫で、生まれては消えてゆく人間に執着するなど愚かしい事だったはずです。
しかし思いもよらなかったであろう自身にもあった感情というもの気づかせてくれたチセが離れてゆくことに耐えられない、その為には愚かしくとも己を改める他ないという決断はリャナン・シーも抱えていた葛藤を乗り越えようともがく姿なのだと思います。
そしてその先にいるチセもまた定命と不死の境目で戦っています。エリアスの決断がどのようにそれに関わり答えを導き出すのか、またその結果2人はどんな結末を噛み締めることになるのか、再び共に走り出したその行く末を見守りたいと思います。



とても良い

2度目のデートはお互い緊張してすれ違いばかりだった前回と違い終始落ち着いたムード。いつの間にやらすっかり秋の空の下、季節の変化が互いを労わるような関係の変化にもリンクしているようで心地よい回でした。
気候のいい時の野外市、僕も好きなので夢中になる正己の気持ちよくわかります。ぎっしりと詰まった宝箱の中のようで集中していないとすぐ見逃してしまうんですよね。でもその結果置き去りで待たされても受け入れるあきらの良さったら…なんていい娘なんだろう。
このあきらという娘は直接的なアプローチは苦手なくせにこういうさらっとしたやり取りが自然で気持ちいいです。常に行間を読む、みたいな関係が心地いいので今のはるかのように言葉が欲しい時にはギクシャクしてしまうのでしょうね。SNSから仕切り直し、いいんじゃないでしょうか。
あきらが道を見失い途方に暮れていた時にそっと寄せられた正己の優しさに救われたように、今度はあきらが正己の心を優しくすくい上げる。間違いなくお互いに特別な関係になった筈ですが、果たしてこれが恋情なのか悩ましいところです。



とても良い

カルタフィルスから振り下ろされた刃を避けずに真っ向から受け止める道を選んだチセ。これまでも誰かの力をあてにするようなことはしてこなかった彼女ですが、かつての遠慮からではなく静かな闘志を秘めての決断でした。
母、智花は幸せな家庭を築きながらも生まれ持った異能に翻弄され夫・息子・仕事とひとつひとつそのかけらを失ってゆき、最後には最愛の娘の首に手をかけることで何もかもを失って儚くなりました。
娘、チセは母の手にかかりかけ元より殆ど何も無かった人生を投げやりに捨て去るところから始まりました。そこから異能の助けを借り伴侶・家族・友人と手探りながらも引き寄せ傷つきながらもここまで歩んできたのです。
対照的な母娘の人生ですが、それぞれの決断や人生に瑕疵があったようには思えません。ただひとつ言えるとすれば、チセには守るものがなく一度捨てた人生だから全てを投げ打って人に尽くすことができたというところかもしれません。
しかし智花も尋常な生涯を過ごしてきたとも思えずチセの行く先にも破滅が待ち受けているのかもしれません。そう考えると同様に何も持たなかったところから生きてきたエリアスが共に生きてくれることは彼女にとってかけがえのない大切なことなのだと思います。
カルタフィルスをも隣人として受け入れる決断を下したチセに残された使命は1度は離れた生涯の伴侶を取り戻すこと。
一刻も早く呪いとの戦いを生き抜く術を勝ち取り、愛するエリアスのところへ駆けつける時を心待ちに次回を待ちたいところです。



とても良い

待ち合わせのときかわいい盛りの妹たちに一瞥しただけではるかの手を取ったあきらと心躍らせるはるか。遠のいた距離を縮めたかったのに少しの隙間からできたすれ違いにお互い傷つけ合ってしまいましたね。
一方悩んでいたちひろとの再会を果たした正己。この日はTシャツに羽織ったシャツの裾も出していで立ちから学生風。顔つきまではしゃいでいるのに待ち合わせの瞬間には緊張してしまう、でもそれも一言二言交わすまで…という流れが素晴らしかったです。
ちひろへの思いは嫉妬だけではなかったのですね。遠慮や気遣いを拗らせて疎遠になってしまうのは良くあることですけど、2人とも会いたい気持ちと諦めの気持ちが葛藤してたんだなあと伝わってきて似た体験を持つ多くの人にとって共感の持てる再会シーンだったと思います。
「大人じゃない、同級生だ」とは言い得て妙でした。思わずこのツイートを思い出してしまいましたけど正己の楽しそうな表情や仕草があきらへのささやかな励ましにつながって気持ちのいいラストシーンだったと思います。いろんな意味で中年殺しの作品ですね。
https://twitter.com/kanno_aya/status/969127496082890752?s=21



全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
とても良い
ストーリー
とても良い
音楽
とても良い

思春期は大きな変化を伴うものだけど実はほんの少しずつの変化で、でも当人にとってはやはり劇的な変化なのだと思います。
性差の表現が注目される作品なのでしょうが、そんな少しずつの成長とそれに戸惑いながらも歩き続ける子供達、そしてそれぞれの関係の変化に対しての懸命さが僕には愛おしい作品でした。
これは性差の問題に一石を投じる、というような作品には僕には思えずごく当たり前に通り過ぎる成長の一側面として捉えられているのかなと感じました。それよりも揺れ動くそれぞれの心情や葛藤がとてもとても丁寧に描かれていて、美しい画面に彩られる細やかで繊細なストーリーこそが見どころの作品だと思います。
また、全編を通じてのカメラワーク・構図の美しさ、巧みさが飛び抜けていて視覚的に大きく心を揺さぶられるところが実に素晴らしく、淡い水彩様の作画と相まって快感、というよりしっとりと沈み込むような充実感を得られました。
観てよかった、というより何度でも観返したくなる、手元に置いておきたい作品だなという思いです。



とても良い

結果的にエリアスの元を去ったチセでしたが、「今のあなたのそばには居られない」の言葉の通りこれは決別を意味するものではないのでしょう。
ここまで2人を見つめ続けてきた僕たちにとっては序盤のマシューとミナの関係を思い出さずにはいられないエピソードだったと思います。
カルタフィルスに唆されたとはいえ残虐な行為を行ったマシューに対してチセは責めたり断罪するような事はありませんでした。当人たちが望んだように風と共に円環の外側へ吹き飛ばすのではなく戻すことを選んだのは、その未来を残したかったからなのだと思います。
もはやチセの中で生死の区別は薄く循環する命の輪の中を巡る存在でありたい、孤独に自己完結した母のようではなく、エゴに巻き込み淀みとなったマシューのようでもなく、重荷を受け入れても共に生きて行きたい、手を取り合って並んで歩いて行きたいと多くの出会いの中で望むようになったのだと思います。
チセにもきっとエリアスの気持ちはわかっているのでしょう。でも彼の選ぶ先には望む未来は無く、だから危険だとはわかっていても新しい道を模索しにヨセフの元へと敢えて飛び込んでいったのかな、と想像しています。
私はワガママだな、なんてまた自嘲してるのかもです。
これまでの多くの人との出会いの中でチセが、エリアスが何を思い成長してきたのかその時々を思いながら2人が納得できる道が見つかるといいなと願うばかりです。



とても良い

吉澤くんがバイトクビになるんじゃないかと心配してましたね。基本的にバイトさんってホイホイ辞めちゃうんですけどたまにこういう子いるんですよ。きっと部活やサークルみたいな感覚でやってるんだと思うんですけど居心地いいんでしょうね。
そんな吉澤くんに恋心のユイちゃんがかわいかった!アニメの感想書いてると、ああこのエピソードはここに繋がるように入ってるんだな、この人はその要員なんだなみたいなこと思いがちなんですけど、ユイちゃんは実に愛らしくて応援したくなっちゃいます。
でもそんなユイちゃんの照れ顔が一度も映らなかったんですね。そこが普段子供っぽい彼女の羞恥が却って強調されているように感じられてとても微笑ましかったです。ちょっと見たかったですけど。
黄色が好きって言ってもらえた時は内心ドキドキだったでしょうね。
さて、あきらの方も教科書に書いた相合傘の落書き、まだ消してなかったんですね。その気持ちわかるなあ。なんだかその気持ちごと消してしまうようでこういうのなかなか消せないものです。でも肝心なところでいつも迂闊なあきら嬢ですね。
正己が悪問と切り捨てた下人の行動は、人生と捉えなおせば答えのない問題でそれは論理的ではなく答えは1つではない。下人の行動を書いた結びを含みのあるものに変えた、というひと言が2人の関係にも含みを持たせているのですね。
勇気もエネルギーもないと自嘲した正己ですけど、きっかけさえあれば誰でも情熱の炎は燃え上がるし勇気も湧いてきます。どちらとも取れる締めはいつものことですけど、タイトルの通りあきらの心が晴れる時には綺麗さっぱり忘れられてしまうかもしれないですからね、正己も悩みどころです。



とても良い

チセがリードし順調に育まれてきた関係が今回の一件で大きな危機にさらされています。そしてエリアスの少なくともチセに関しての切実さ真摯さが伝わってくる一方で、チセのある意味生命への繋がりの希薄さが見えてひどくつらい回となりました。
とにかくチセは生への執着が薄くそれが周囲とのやりとりの中で齟齬を来しているのが明らかでした。アンジェリカに頬を貼られても今ひとつわかってない、シャノンやリンデル、マリエルの心配も同様で本人は割とさっぱりしているような…。
そんな中エリアスは彼女がその齟齬をわかっていないことを悟っていて尚且つそれを受け入れる、そのさりげないやり取りがあまりに切なく、親愛に溢れていて胸がいっぱいになってしまいました。
それでもチセが自身の生命を引き換えに存在意義を得ようとしているのを目の当たりにすると堪えられず部屋から出ていってしまう、それでも激することはしないところがいかにも彼らしく大変つらいながらもいいシーンだったと思います。
その後の石垣の上でのやりとりでエリアスが言った「ちゃんと僕を連れていって」という一言が、2人の関係性や彼の懸命さ、愛情、寂しさなどいろんなものが込められていて僕の胸には深く深く響きました。
エリアスを始め、残されるもの達への思い遣りが足りていないことが本当の意味ではチセにはわかっていないようです。彼女の命が終わればルツもまた終わってしまうということすらまるで忘れ去られているようで…
僅かに残された希望になりふり構わず縋っていく様子の2人ですが、気の毒なステラやまさかのホコタテ案件と化したドラゴンの呪いとカルタフィルスの呪いなど急激に話が動き出しています。どうかどうか幸せな幕引きになるようにと祈るような思いです。



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