Annictサポーターになると広告を非表示にできます。
良い

「弱い私はもう死にました」と言い捨てる祥子の新たなバンドは、『Ave Mujica』

「焦りや後悔はここに置いて、舞台に上がれば、頼れるものは我が身一つ」という言葉に、素顔を隠すためのマスクは、祥子の心の影を表しているようだった。そして、CRYCHICを捨てるに至った己の弱さを自分から切り離し、なかったことにしたがるかのような逃避的な姿が、今の祥子のように見えていた。

そこで、舞台の上で作り出した『Ave Mujica』は、彼女たちが「かりそめの命を宿した人形」と言い表すように、どこか脆さを感じさせるものでもあった。だけど、そんな脆さを感じる分だけ、もう弱い頃の自分ではなく、刺々しくより強い自分であろうという気概も感じさせるようだった。

だから、『Ave Mujica』の世界観とは、祥子の弱さを握り潰すための強気な心の爆発なのだと思うのだ。まさしく、家に帰って開口一番、「ただいま、クソ親父」と言い放つような荒々しさで。



Loading...